LYDEX
“LYDEX”の技術概要


LYDEXは、既に安全性が証明されている高分子の医薬品原料であるデキストラン及び食品添加物であるポリリジンを出発原料としており、それぞれに簡単な修飾を施して得られるアルデヒド化デキストラン及び無水コハク酸処理ポリリジンから構成されています。 これら2成分を適切な割合で混合することにより、高い接着性能と柔軟性のあるハイドロゲルが形成され、シーラント効果や止血効果を発揮した後はは生体内で速やかに分解・吸収されます。
“LYDEX”の特徴


LYDEXは、優れた特長に加え、材型選択性にも富んでおり、様々な体の部位に適用できることから、シーラント材、止血材、癒着防止材、内視鏡用創傷被覆材、薬物徐放性基剤(DDS)といった用途以外に、アンメット・メディカル・ニーズにも適用する可能性が示唆されるこれまでにないユニークな医療用接着材です。
“LYDEX”の用途

当社では、主に5つの領域でLYDEXを用いた応用技術の研究開発を進めています。
1.シーラント材
シーラント材は、肺の空気漏れなどの体内ガスや体液の漏洩防止用途で使用されています。呼吸器外科領域では、術後、肺を切除した部位から空気漏れが発生する肺胞瘻が最も頻度の高い合併症とされており、漏洩防止として組織接着剤(動物由来成分)が最も使われています。しかし、組織接着剤は、接着力が弱く十分な閉鎖効果が得られません。LYDEXは、膨張収縮を繰り返す肺に対応できる優れた柔軟性と高い接着性を有しており、組織接着剤に代わる安全性の高いシーラント材として開発を進めています。
2.止血材
医療の現場において、外科的処置では防止できない出血に対して、主に組織接着剤(動物由来成分)が止血材として幅広く使用されています。しかし、組織接着剤は血液製剤であるフィブリノゲンを原料としていることから、ウイルス感染のリスクを伴います。LYDEXは、医薬品や食品添加物として使用されている天然物由来高分子を出発原料としていることからウイルス感染フリーであり、またその高い機能性から、組織接着剤に代わる安全性の高い止血材として開発を進めています。
3.癒着防止材
開腹手術後に発生する生体組織の癒着は、患者の90%以上に発生し、癒着性腸閉塞の原因となるだけではなく、再開腹手術時の視野不良や臓器損傷により手術を困難にします。これを防ぐために組織同士の間に物理的なバリアを設けることが癒着防止材の開発コンセプトとなります。LYDEXはハイドロゲルが形成された後、組織と接着していない面の接着機能が失われるため、手術後の組織や臓器間の癒着を防ぐために必要とされるバリア材としての二次的な効果が期待でき、癒着防止材としての開発を進めています。
4.内視鏡用創傷被覆材
出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的止血術に止血剤散布法があります。これは内視鏡直視下で止血を目的とした薬剤を出血部位に散布する方法であり、トロンビンやアルギン酸ナトリウム、エピネフリン添加生理食塩水が薬剤として用いられています。最も簡便な方法ですが、機械的止血法などの手技に比べて止血効果が低いのが欠点とされています。この課題を解決するために、LYDEX技術を用いることで、従来法よりも効果的に出血を抑え、創傷部位を胃酸から保護しながら治癒効果を高め、再出血を予防することができる潰瘍向けの創傷被覆材(内視鏡用)が開発され、世界各国で臨床使用が始まっています。
5.薬物徐放性基剤(DDS)
優れた安全性と高い機能性を持つLYDEXは、3種類(粉末・液体・シート)の材型による高い利便性も併せ持っており、体の様々な部位に適応できる可能性があるだけでなく、分解時間を任意にコントロールできることから、担持させた薬剤を効率よく局所へデリバリーできる徐放性のDDSとして、幅広い用途開発を進めています。